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【毎日更新】金子一朗さんインタビュー<6>

39歳での指の怪我とリハビリ。コンクールとの出会い

― 指の怪我というのは。

「たまたま家で年末に風呂に入っていたときに、つき指をしてしまったのですが、そのときにぶちっという音と共にここ(人差し指)の腱が切れちゃいました。それで第一関節が直角に曲がったまま動かなくなって、病名はマレットフィンガーというらしいです。それで初めての経験だったから、やばい、ピアノ弾けなくなるって思いましたね。それまでいい加減にやっていたくせに(笑)。必死になって治してくれる医者を探しました。結局半年くらいギブスで固定して治したのですが、そのあとのリハビリは凄く痛いものでした。固定して治しているから筋肉が固まってくっついてしまって、指がどこも曲がらなかったんです。自分で第一関節をまげるリハビリをしないと永遠に元には戻らないんですが、曲げるのって物凄く痛いわけです。」

― どんなものでもリハビリというのは大変だと良く聞きます。
「そのとき友達に、何かモチベーションがあったらいいんじゃないかって言われて、進められたのがアマコン(日本アマチュアピアノコンクール、国際アマチュアピアノコンクールの前身)でした。その予選が7月の終わりくらいだったはずで、5月末に少し曲がるようになったのをみて申し込みました。それから練習して、やっと弾けた予選のときはものすごく緊張しましたね。とにかくピアノを弾いていない期間もたいへんに長かったので。当時部門が二つあって、両方出られることになっていたから両方申し込んだんです。結果はB部門では1位になって、A部門では一次予選落ちでした。複雑な気持ちだったので、翌年もA部門を受けてみようかなと思いました。」

「ところがそのとき自分の演奏を聴いてくれていた人がいて、もっと別にもアマチュア向けでないコンクールを受けたらいいと勧められたんです。それで紹介されたのがピティナの特級でした。これを見てみたらまず分量が半端なく多くて。日本音コンよりも多いじゃんって思いながらエントリーして(笑)。それで翌年受けてみたら、アマコンのA部門は二時予選落ちで、ピティナの特級のほうはファイナルまでいっちゃった(笑)。ここでのファイナルは本当に緊張しました。自分みたいな人間がそこに残った前例がないし、ピアノ弾く時間ないし、親父だし(笑)、独学だし。他の演奏者はスーパーな英才教育を受けて、スーパーな先生についていて。場違いじゃないですか。そのプレッシャーの中ぼろぼろでその年は終わりました。それで翌年もやっぱり両方受けてみようということを思ってやってみたら、アマコンでは本選まで通って3位をもらえました。一方の特級もファイナルまでまた残ったから、レセプションで色々な偉い先生方、関本昌平くん(ショパンコンクール4位)の二宮裕子先生や播本三恵子先生など、にアドヴァイスをもらいました。それなので、終わったときはもう翌年は受けなくっていいと思っていました。疲れるし、大変だし、苦しいし。」

「けれど3回目の特級を受けるきっかけになったのが邦人現代(課題)曲。バッハのカンタータ「目覚めよと呼ぶ声が聞こえた」をモチーフにした作品を偶然楽譜を見てしまったら、これがすばらしい音楽に感じて、それを弾いてみたいと思った。それが〆切の2日前。でも弾くには本選まで進まなければいけないので、頑張って準備して、それでグランプリをもらいました。あの作品を見なかったら僕は受けていなかった。不思議な巡り合わせです。そのとき直前に見てもらえたのが、ピアニストの田部京子先生や、森知恵先生。それも良かったですね。そのあとはスケジュールをこなすだけで精一杯の地獄の日々が未だに続いています(笑)。ドビュッシーは収録が毎月で、連載が2週に一度。冗談みたいにきついです(笑)。」
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メール確認後、申し込み受付の完了またはキャンセル待ちのお知らせを折り返しお送りいたします。

【毎日更新】金子一朗さんインタビュー<5>

― 選曲ということで、例えばアマチュアでは凄いところから作品を引っ張り出してくる人もいます。
「僕は正直なところ、第二次世界大戦以降の作曲家の作品にはあまり強い興味を惹かれないですね。というより、それ以前の作品で生涯に弾ききれないような膨大な作品が自分の弾きたいものとしてあるという感じ。手がまわらないです。例えばバッハだけだって全部は終わらないですし、歌曲の伴奏や室内楽も非常に多く残っています。もっと言えば僕は音楽作品に対する考古学的興味があるんですよ。」

― 考古学的興味というと。
「つまり今生きていない作曲家の作品に対する関心ということですね。このような作品には楽譜以外のたとえば作曲者自身の演奏は残っていない。バルトークとかプーランク、ドビュッシー・ラヴェルは録音が若干残っていますが例外的でしょう。すると楽譜から音楽を起こすことになるのでそこが面白いと感じられます。」

― 解釈をできる?
「発見できる。」

― 解釈や発見と言うのは作曲家自身による解釈の再現と言うことですか。
「例えば、ある音を使っているときに、その音はどういう意味があるのか、ということですね。楽譜に書いてあることを読んで、例えばピアノとかクレシェンドと書いてあったら何故なのか、
何故ここの和音なのか、意味をひとつひとつ全部押さえる、ということです。そうするとその作曲家がその音楽で表現しようとしていた美意識とか、思想とか、楽譜単独から見えてくる。
そこに共感が得られる。そういう作品を弾きたいと思っています。近代から前の作品だとまず全部読みかたが違うから面白いというのがあります。例えばバッハの作品なんかだと当時なかった楽器なわけで、強弱の記号やアーティキュレーションだって書いていないわけで、素の音符だけだけど、それをそのまま弾けばいいかと言ったら、そんなことあるわけないわけで、当然強弱とかニュアンスとか大量に含まれている。それをあるべき形、近代の作曲家だったら楽譜に書いていたこと、を演繹的に推論して、それでそれを付け足さないといけない。バロックとかをやるのにはそういう面白さがあると思います。それから古典とかだと急速にピアノが進化している時期なので、中途半端にピアノっぽく書いていたり或いは極めてピアニスティックに書いていたり、ひとりの作曲家の中にも混在している。」

― ベートーヴェンとかの作品でもそうですね。鍵盤の幅も広くなっていきますし。
「ものすごく変化をしていますね。それを現代のピアノで弾くときに、書かれている通りに弾くだけでは分からなくて、相変わらずバロックの頃からの慣例があり、逆に書いてある指示を額面どおりにやってしまうと現代の楽器では駄目になってしまうところもある。それ以外にもそれぞれの作曲家の民族的な趣味、歴史観とか、そういうものがあってそれを考えて楽譜に書いているものを再創造することが解釈ということではないかと思います。楽譜から色々なことを考えてきちっとしたものをつくるところですね。そこが面白い。」
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「Musamis」

「Musamis」とは、六連とも関わりの深い社会人・学生ピアノサークルです。今回は代表の渡辺さんよりご紹介をいただきました。

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Musmais紹介
私達は芸術の女神の友になりたい
(Musamis設立趣旨より)

Musamisは、六連で知り合った有志により1999年8月に開催された「ショパン没後150年記念演奏会-今、甦るショパン-」をきっかけに、大学卒業後も演奏活動の場を創っていこうと意気投合したメンバーによって2000年4月に設立されました。

Musamisの活動の中心はテーマを付した年2回のコンサートです。コンサートをひとつの作品と捉えてひとつの世界を作り上げていくことは、音楽への新たな視点を開かせてくれ、そのような愉しみがテーマの中にあるとMusamisは考えています。
また、2ヶ月に1回の例会では、楽器メーカーを訪問して技術者の方のレクチャーを受けるレクチャー例会、ホールを借りてその響きを堪能しながらのホール練習会、1つの曲集すべてを会友で連続演奏する曲集例会などを実施して、ピアノの演奏を探求するとともに、会友の交流を図っています。

現在では、20代から70代まで、80名にのぼる会友を迎え、六連出身者にとどまらず、Webサイトからやご紹介により訪問いただいた方も増え、その比率はほぼ半々となっております。大学生ピアニストから社会人ピアニストまで、それぞれの会友が、それぞれのペースで、参加できるときに、参加したい企画に参加するのがMusamis流。ご興味がおありの方は、是非MusamisのWebサイトを覗いていただければと存じます。また、来月6月21日(土)には、「8」をテーマに、12回目のコンサートを開催いたします。是非、ご来場下さい。

■ Musamis Summer Concert 2008 8-octave
■ 2008年6月21日(土)14時 TOMONO HALL

Musamis URL  :http://www.musamis.com
Musamis e-mail :musamis@hotmail.com

Musamis 代表 渡辺 一平(東京大学ピアノの会出身)

【毎日更新】金子一朗さんインタビュー<4>

― 発音が違うということでしょうか。曲の作り方というのも当時の影響ですか。
「実はサークル当時は結構音源も聴いていました。でもちょっとしたきっかけがあって、大学3年のときにリストのソナタを文化祭で弾いたんですが、あるピアニストのスタイルが残っていたのを先輩から指摘されたんです。音源を聴いたのが演奏に残っていたのですね。そのときに自分はレプリカはやだな、と思いました。一流の画家のコピーを飾るくらいなら、それより落ちる画家の本物のほうがよいと。それでそれから音源を聴かなくなりました。それがひとつの影響です。」

「けれどそのときは楽譜を見ても音楽を再現することがなかなか難しくて、また自分で直感的にこう弾きたいと思ったことが正しいかそうでないかの確信が持てなかった。例えばここを歌いたいと思ったときに、それがいわゆるクサイ歌いかた、センスの悪い歌いかたかもしれないじゃないですか。或いは、逆にここは抑えて弾いてみようと思ったところをそうすると、非音楽的になるかもしれない。そういうことをどうしたらいいのかということを模索していたのですが、そこで一つの本に出会いました。ギーゼキングの「現代ピアノ演奏の技術」です。このギーゼキングという人は楽譜からがーっと分析して弾けるらしくて、自伝を読んでいても例えば飛行機の中で楽譜を分析して、一度も弾かずに本番に乗せてしまうとかやっていたらしい。そんなことできるのかよとも思いましたが(笑)、あの人はできたのかもしれませんね。それがちょうど社会人になる時期です。でもその本を読んでも納得できないところがあって、それが作曲学でした。例えば和声とか、楽式とか。それでそのときにちょうど藝大のソルフェージュの先生を紹介してもらってそこに毎週通うようになりましたね。結局その先生が僕が今作品を分析できるようになったベースを教えてくれました。だからサークルにいたことで、先輩から自分の演奏の問題点を教わったという意味を考えると、ピアノの先生からより大きな影響を受けたとも言えると思います。」
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【毎日更新】金子一朗さんインタビュー<3>

― 大学では早大ピアノの会に入ります。
「僕が大学に入ったときにピアノの会が立ち上がりました。そのとき初代の幹事長が城野さんという人で、その当時は20人ちょっとくらいでしたね。実は僕がいろんな意味で今の演奏スタイルのもとになったものは、ほとんどすべて大学の四年間のサークルの先輩から教わったことなんですね。例えば僕の曲を仕上げる方法のきっかけは当時の薫陶でした。あとは堀さんという1つ上の先輩がいたのですが、その人がちょっと信じられないような青白い音を出す人でした。それはすごく冷たくて綺麗で、きらっと光っていて、ちょっと聞いたことがない音。僕はその音に魅せられたんです。そのとき最初に聴いたのが、スクリャービンの4番のソナタでした。冷たくて、不気味で、妖しいスクリャービン。それでどうやってその音を出しているんだろうと思って、話を聞いたり遊びにいったりしていたら、神野晃というピアニスト、先生を紹介してくれたんですね。それでレッスンに行くとその音の技術の違いがわかった。」

― 先生の音が凄かったということですか。
「そうですね。まずレッスンはハノンの1番からスタートしたんですが、ずっとハノンの一小節が終わらない。ドミファソラソファミまでが1時間で行かない。そこの一小節だけなのに求められた音が出ないんですよ。言われることは分かるんだけれどできない。それが21歳のころでしたが、それまで15年かけて出来た技術を崩さなければならなかったですね。だからその頃から今に至るまでピアノがどんどん弾けなくなっています。たった一つの音を出すだけで、違うことが分かってしまうから。」
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